体感温度のグラフを描く
人が感じる暑さや寒さの感覚を体感温度という。知覚できる温度ということからsensible temperatureとか、人が体感する見かけ上の温度ということからapparent temperatureとも呼ばれる。この温度感覚は、体表を出入りする熱流束(heat flux)によって決まる。この熱流束は、体表温度と気温の差だけでは決まらず、気流(風速)が大きく影響するとともに、湿度や日射も影響する。寒冷な時期には、風速が1 m/s増加するごとに、体感温度は約1 ℃低下するとよく言われる。この効果を風速冷却(wind chill)と呼んでいる。
ここで、体表温度をとし、人の標準的な歩く速度(活動速度)を とする。M は風速で、これを0 m/sから30 m/sまで変化させ、周囲の大気温を10 ℃から-40 ℃まで変化させた場合の体感温度を、エクセルで計算して見よう。
エクセルでの計算結果を上の図に示す。B列に風速を0 m/sから30 m/sまで2 m/s刻みでオートフィル機能を利用して書き込み、2行目に気温を10 ℃から-40 ℃まで5 ℃刻みで、やはりオートフィル機能を利用して書き込んだ。そして、C3セルに、関数ウインドウに示されているような式を書き込み、この式を領域内のすべてのセルにコピーすれば出来上がりである。
このグラフを見ると、気温が低いほど、風速の増大に伴う体感温度の低下が大きいことが分かる。たとえば、気温10 ℃の場合は、風速10 m/sで体感温度は10 ℃低下し、風速30 m/sでは、体感温度は約20 ℃低下している。一方、気温-40 ℃では、風速5 m/sでも体感温度は20 ℃以上低下しており、風速30 m/sでは、体感温度は60 ℃近く低下している。
左辺が風速冷却指数で、すなわち体感温度を示す。右辺の式中 T は摂氏(℃)を単位とする気温、 V はキロメートルで測る時速(km/h)を単位とする風速である。日本では、風速は秒速で示されることが多く、時速の場合は海里で測るノット(kt)が用いられ、km/hで表示する風速にはなじみがあまりない。欧米では風速の単位はノット以外にマイル/hやkm/hが多用される。
風速冷却指数を、m/sで表した風速と、摂氏の気温の表をエクセルで計算した結果を上に示す。風速は、値が小さいところの指数の挙動を示すために、10 m/sまでは 1m/s刻みで、それより上の階級は2 m/s刻みとした。気温は、10℃から-40 ℃まで、5 ℃刻みとし、これらはオートフィル機能を使用して書き込んだ。
前のグラフと比較すると、風速冷却が小さくなっていることが分かる。気温-40 ℃で風速30 m/sの時に、前のグラフでは体感温度が-100 ℃だったものが、2001年の指数では-70 ℃である。2001年の指数では、気温が-40 ℃ときわめて低いときに、風速 1 m/s当たり1 ℃の低下となっており、気温が10 ℃と高いときには、風速 1 m/s当たり0.2 ℃程度しか低下していない。また、気温が高いときは、風速1 m/sの弱い風の時は、かえって体感気温が上昇する傾向が現れている。
上のグラフを見ると、気温が0 ℃以上では、ほぼ「風速 1 m/s当たり1 ℃の低下」となっている。一方、気温が低くなると、風速 1 m/s当たり2 ℃程度の低下となっている。
風速冷却が著しい結果となっている。特に、風速が弱いところでも急激に体感温度が低下する結果となっている。もともとは、このような設定にも対応するような式とはなっていないと思われる。式の意味から離れれば、寒いときに動かなくなると凍死することを示している様にも感じられる。 |