エクセルのグラフで学ぶ気象学0058


凝結核の粒度分布と両対数グラフ

 空気中には、さまざま成因からなる大きさの異なる微粒子が浮遊している。19世紀にエイトケン(Aitken)は、それらの微粒子の大半の直径は0.1 μmより小さいことを示し、海洋上の濃度は1立方cm当たり2~3百個で、都市部では1立方cm当たり数百万個であるとした。同じく19世紀にレイリー(Rayleigh)は、大気中の光の散乱の大半は、その直径が0.1~1.0 μmの微粒子によって生じていることを示した。

 当時から、直径が1.0 μmより小さい微粒子と、それより大きい微粒子の成因が異なることが知られていた。1.0 μmより小さい微粒子は、煤煙(smoke)、ガス(fume)、煙霧(haze)などと呼ばれ、これより大きい微粒子は粉塵(dust)、もや(mist)、霧(fog)、灰(ash)などと呼ばれた。ただ、細かい微粒子の数の方が、大きい微粒子の数より圧倒的に多いことから、これらの2種類の大きさの微粒子の数が2峰性の分布をしていることが隠されてしまった。

 第2次大戦後、ユンゲ(Junge)は、様々な測定法を用いて精力的な研究を行い、大気中の微粒子の直径別の数の分布が連続的な、有名なユンゲの分布式を導いた。その式は、

JungeDistribution.jpg

であり、粒径が0.1~10.0 μm の範囲では、k.jpgの値は約4.0であることも示した。クラーク(Clark)とホイットビー(Whitby)は、この式を観測結果に当てはめて、この式のc.jpgJungeDistribution2.jpg" であることを示した。

 この係数の値を用いて粒子の直径と1立方cm当たりの粒子数の関係をエクセルで計算してグラフにした結果を以下に示す。縦軸も横軸も対数目盛となっている。このようなグラフを両対数グラフというが、エクセルで両対数グラフを描くには、それぞれの軸のそばで右クリックして現れるダイアログボックスで、「軸の書式設定」、「軸のオプション」と進み、「対数目盛を表示する」のチェックボックスにチェックを入れればよい。

JungeDistribution3.jpg

 この式中の c.jpgの値は、大気中の粒子数の総計によって変化するとされ、シュトゥールの教科書にはJungeDistribution4.jpgとして計算したグラフやJungeDistribution5.jpgとした練習問題がある。

 その後、ホイットビー(Whitby)の研究チームは、カリフォルニア州パサデナのスモッグを解析していて、ユンゲの式は大気中の微粒子の粒径別個数分布によく合うのだが、単一構造のモデルは適切ではないことを発見した。すなわち、粒径が0.3 μm を中心とした分布と、粒径が5.0~15.0 μmを中心とした分布の二峰性の分布になっていると結論した。

 多くの研究者は、1947年にメイ(May)が開発したカスケード・インパクターを用いて粒度分布の測定を行っているが、この粒度分析装置は単峰性の分布には適していても、二峰性の分布の構造を隠してしまうという。

(2011.5.2)


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