エクセルのグラフで学ぶ気象学0065


コリオリの力 (1)

 気象学でコリオリの力(Coriolis Force)を理解することは極めて重要である。ところが、コリオリの力が実際には存在しない見かけの力(Apparent force)であり、最初は何のことかピンと来ないかもしれない。コリオリの力は、地球のように回転している物体の上を移動する物体に作用する見かけの力である。この見かけの力の大きさを評価するには、地球の自転について考える必要がある。

 地球は、北極の方向から見ると反時計回りに自転している。1日24時間で朝昼晩が繰り返されているので、この自転速度が1/(24×60×60)=1/86400(回転/秒)かと思うと、これは少し異なる。地球は自転しながら、太陽の周りを1年で1回転、自転の方向と同じ方向(北極の方向から見て反時計回り)に公転しているからである。地球は太陽の周りを365.2422日かけて1回転するが、その間に地球は366.2422日分自転する。すなわち、1日分余計に自転をすると、太陽を基準として考えた元の位置に戻ってくる。

 そこで、太陽系内ではなく、静止した恒星系から見た地球の1日は、(24×365.2422)/366.2422(時間)となる。この式をエクセルで計算してみると、23.93447時間となる。この値を3600倍して秒の単位に直すと、やはりエクセルの結果は86164.0905秒である。この値を恒星日という。これが太陽系の外から見た場合の地球の1日の長さである。

 1恒星日は24時間(24×60×60=86400秒)より235.9095秒(3.93分)短い。ここまでのエクセルの計算結果と、その式を念のため以下に示す。列Cに計算結果が示されており、列Dにその計算式を記入した。

Coriolis01.jpg

 ここで、恒星日を求めたのは、コリオリ・パラメータを計算する上で必要になるからである。地球の自転の角速度Omega.jpgは、この恒星日を用いて

Omega2.jpg

となる。この計算結果も、前掲のエクセルの計算結果に示されている。

 地球上で生活している者は、地球に固定された座標系にいるため、地球の自転によって地表面が高速で移動していることを自覚できない。地球の外部から観察すると、地球の表面は自転によって高速で移動している。この地表面の移動速度は緯度によって異なる。実際の地球の形状は回転楕円体であるが、それを半径R=6356.766 kmの球とすると、地球上の各地点の移動速度は、その地点の緯度をTheta.jpgとするとROmegaCosTheta.jpgとなる。この移動速度をm/sを単位として各緯度で計算した結果を以下に示す。

Coriolis03.jpg

 求められたグラフの形は、コサインカーブそのものである。赤道上(緯度0°)では、463.5 m/s の高速で移動しているが、南北の極(緯度90°)では地球の自転による移動速度は0である。日本が位置する北緯35度近辺では、380 m/s ほどの高速で移動している。ただ、我々は地球の上(地球の慣性系)にいて、その移動速度を感じ取ることはできない。

 地球の自転に伴う見かけの力として、地球上の物体には遠心力が働いている。遠心力は、地球の自転軸に垂直の方向に作用する。緯度Theta.jpgの地点にある単位質量の物体に働く地球の自転にともなう遠心力の大きさは、地球を球と考えた場合、自転軸から地表面までの距離をr.jpgとすると、

CentrifugalForce.jpg

となる。この式を、緯度0度(赤道)から緯度90度(極)まで、エクセルで計算した結果を下に示す。

CentrifugalForce2.jpg

 このグラフの形もコサインカーブそのものである。赤道で遠心力が最も大きいが、その大きさもCentrifugalForce3.jpgに過ぎず、地球の標準重力加速度の値g2.jpgの0.34 %に過ぎない。

(2011.7.24)


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