20130118Fuji1

エクセルのグラフで学ぶ気象学0019


気圧の高度変化のグラフを描く (2)

 前回、近似式を計算して気圧の高度変化のグラフを描いた。そして、高度にかかわらず気温を一定値とした場合と、高度上昇に伴う気温変化を考慮した場合の2種類のグラフを比較した。それでは、ここで計算した2種類の気圧の計算結果のどちらが実際の値に近いのだろうか?もちろん、気圧の値は緯度、経度、季節によって変化するが、ここでは、1976年米国標準大気モデルの値と比較してみよう。

E-Fig0132.jpg"

 上に示したグラフは、気温を高度にかかわらず250 Kの一定値として計算した大気圧P0を青い線で、1976年米国標準大気モデルの大気圧Pstを赤い線で示してある。このグラフでは分かり難いが、計算値の青い線は、高度10kmまでは赤い線より下にあり、それより高い高度では赤い線より上にある。片対数グラフでは、その差が高度上昇とともに目立つようになる。

E-Fig0133.jpg"

 上のグラフは、各高度の気温の値として、1976年米国標準大気モデルの気温を代入して計算した大気圧P1を青い線で、1976年米国標準大気モデルの大気圧Pstを赤い線で示してある。高度32 kmまでは青い線が赤い線の下にあり、それより上の高度では青い線が赤い線の上にある。その差は片対数グラフ上で、高度上昇とともにかなり目立つようになる。

 これらのグラフを比較すると、近似式に気温の値を逐次代入した方が、近似の程度がかえって悪いように見える。

 そこで、気圧の計算値が1976年米国標準大気モデルの値と一致するように、近似式の気温の値を決定してみた。その計算は、エクセルを用いて力づくで行った。すなわち、各高度でのP1Pstとの残差が0となるような気温の値を、試行錯誤的に探した。その結果を示すと、下のグラフのようになる。

E-Fig0134.jpg"

 赤色で示した線は、米国の標準大気モデルの気温の高度変化のグラフで、青い線は、大気圧の近似式が、米国の標準モデルの大気圧に一致するように選んだ気温の高度変化のグラフである。このような差が現れるのは、大気圧を単純な指数関数で計算できないことを示している。ただ、単純な式にもかかわらず、十分な精度で近似できているという見方もできる。

 片対数グラフの特徴を考えると、計算結果とモデル値との適合度を良く見せるには、高度50 kmでの値を一致させることが重要である。それには、計算式の温度の値として、上のグラフの50 kmの気温の値を用いて全区間にわたって大気圧を計算すればよい。すると、片対数グラフ上で適合度が良く見えるようになる。

E-Fig0135.jpg"

 上のグラフは、温度Tを全区間で238 Kの一定値で計算したP0Pstを片対数グラフで示したものである。高度 10 kmまではP0の値がPstより小さく、高度10 kmより上空ではP0の値がPstより大きいという傾向はT=250 Kの時と同じである。

 このように、片対数グラフではT=238 Kの時の方が良く適合しているように見えるが、残差の絶対値の合計はT=250 Kの時の方がずっと小さい。残差の絶対値の合計を最小にする気温の値はT=248 Kである。


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