微小水滴形成時の相対湿度
飽和水蒸気圧曲線を描く (1)で説明したように、空気が水蒸気で飽和した状態の水蒸気の分圧が飽和水蒸気圧である。空気が水蒸気で飽和した状態とは、水面あるいは氷面から大気中に飛び出す水の分子数と、大気中から水面あるいは氷面に飛び込む水の分子数が等しくなった状態である。これを水分子の移動が平衡状態にあるともいう。クラウジウス・クラペイロンの式で計算した飽和水蒸気圧は、温度のみによって定まる値であるが、それは平面の水や氷に対する飽和水蒸気圧を与えている。
一方、水滴の表面には表面積を増加させまいとする力、すなわち表面張力が働いており、表面の曲率の大きな微小な水滴表面では、平面に対する飽和水蒸気圧に対応する水蒸気密度より水蒸気密度がかなり大きくならないと、水滴の状態を維持できない。したがって、表面に曲率がある水滴表面に対する飽和水蒸気圧は、平面に対する飽和水蒸気圧よりかなり高くなる。
与えられた体積の液体の中で、表面積が最も小さい立体は球である。球の半径を としたとき、その体積は次の式で与えられる。
一方、その球の表面積は である。そして、この球の半径が微小量増加した場合の表面積の増加量と体積の増加量との比は以下のようになる。
上の式は、表面積の増加量と体積の増加量の比は、水滴の半径に逆比例することを示しており、球の半径が小さくなると、表面積の増加割合が極めて大きくなり、表面張力の働きによって、表面積の増加を阻止しようとする力が強くなる。したがって、半径の小さい水滴は形成されにくい。
水滴の曲率で補正した飽和水蒸気圧 と、補正していない飽和水蒸気圧 との比を とすると、その値は以下のようになる。
この式中、 は絶対温度、 は水滴の半径である。定数 は である。0 ℃におけるこの式を、エクセルで計算した結果と、その結果を片対数グラフを用いて以下に示す。
横軸を対数目盛とした片対数グラフとすると、グラフの形は反比例を示す双曲線状となる。ここで示された縦軸の値を100倍したものは相対湿度を与える。水滴の半径が0.01 μm のときは、相対湿度が113 %の過飽和状態とならないと、水蒸気圧は平衡に達しないこと、すなわちこの半径の水滴とならないことが示されている。一方、水滴の半径が2 μm以上では、水滴の曲率を考慮しなくてもほとんど問題なく、過飽和状態にならなくても水滴が形成されることが示されている。
(2011.5.4)
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