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2013年と2012年の年平均気温偏差とその季節変動


2013年と2012年の年平均気温偏差とその季節変動

 日本の年平均気温偏差の経年変化(1898~2013年)のグラフが気象庁のホームページ日本の年平均気温の偏差の経年変化(1898~2013年)に掲載されていることは前回紹介した。そのグラフは前回紹介した通り、100年間に1.14 ℃の上昇トレンドがあり、回帰線(赤い線)は右肩上がりとなっているが、グラフで薄いグレーで示されている年々の変動はかなり大きい。今回問題とするのは、このグラフの右端部分で、赤で囲んだ部分である。

Trend2013.jpg

 この右端部分の2012年の気温偏差は+0.04 ℃、2013年の気温偏差は+0.34 ℃であるので、2013年と2012年の間の気温偏差は+0.30 ℃となる。気象庁は、この気温偏差を、1898年以降観測を継続している気象観測所の中から、都市化による影響が少なく、特定の地域に偏らないように選定された15地点の月平均気温データから算出している。月平均気温から年平均気温を計算するため、この値の有効数字は、気象庁の公表している年平均気温の有効数字より桁数が一ケタ多いようだ。

15地点の2013年の2012年に対する年平均気温偏差

 15地点の2012年の年平均気温と2013年の年平均気温の値から偏差を計算すると、以下の表が得られる

観測点 2012年平均気温(℃) 2013年平均気温(℃) 2013-2012(℃)
網走
6.8
7.0
0.2
根室
6.5
6.8
0.3
寿都
8.8
8.8
0.0
石巻
11.6
11.6
0.0
山形
11.8
11.9
0.1
銚子
15.7
16.0
0.3
飯田
12.6
13.1
0.5
伏木
14.0
14.2
0.2
彦根
14.8
15.1
0.3

15.4
15.5
0.1
浜田
15.5
16.0
0.5
多度津
16.1
16.6
0.5
宮崎
17.2
17.9
0.7
名瀬
21.4
21.8
0.4
石垣島
24.3
24.5
0.2


 この表をもとに、15地点の2012年と2013年の年平均気温の偏差を計算すると、+0.287 ℃の値が得られた。月平均気温の値ではなく、年平均気温の値から計算したのは、この後の計算の手間を省くためである。

アメダスを含めた統計値との比較

 前述した15地点、旧気象官署と呼ばれる地上観測所約150観測点、及び地域気象観測所と呼ばれるアメダスまでを含めた約800観測点について2013年の年平均気温の2012年の年平均気温に対する偏差のヒストグラムを以下に示す。
2013-2012Hist.jpg

 気象庁が都市化の影響が少ない地点として選択した15地点の偏差が最も小さく+0.282 ℃である。これらの15地点はすべて地上観測所に含まれているが、約150か所の全地上観測所の平均偏差は+0.373 ℃と、これら3つの中では最も高かった。地上観測所には、東京、横浜、名古屋、大阪、京都などの大都市が多く含まれているから、偏差が大きかったとも考えられる。一方アメダスは、人里離れた場所に設置されている例が多く、アメダスを含めると、これより小さな偏差+0.330 ℃となっているとも考えられる。

 これらのヒストグラムを見て興味深いのは、分布のモード(最頻値)はいずれの場合も+0.5 ℃である点だ。15地点の平均では+0.30 ℃だったが、日本全体としては+0.5 ℃と考えた方が自然なことを示しているのではないだろうか?

 続いて、各地方別の傾向を調べてみよう。結果を以下の表に示す。地域別に15観測地点の偏差平均と806観測地点の偏差平均、及び15地点平均偏差から806地点平均偏差を引いた値を示している。カッコ内の数字は、それぞれの平均値を集計した観測地点数である。

地域 15観測点偏差平均
(観測地点数)
806観測点偏差平均
(観測地点数)
15地点と806地点の差
北海道
0.167 (3)
0.150 (157)
+0.017
東北
0.050 (2)
0.022 (134)
+0.028
関東甲信越
0.400 (2)
0.444 (142)
-0.044
東海・北陸・近畿
0.250 (2)
0.412 (141)
-0.162
中国
0.300 (2)
0.412 (69)
-0.112
四国
0.500 (1)
0.490 (41)
+0.010
九州
0.433 (3)
0.574 (122)
-0.141
全国
0.287 (15)
0.330 (806)
-0.043


 この表には、各地域による偏差の値の隔たりが示されている。北海道と東北で値が小さく、それは15地点でも806地点でも共通した特徴である。関東甲信越と四国及び九州は値が大きく、これも15地点と806地点で共通した特徴となっている。

 北海度と東北は、15地点の平均偏差より806地点の平均偏差の方が小さいという特徴がある。四国もそうだが、四国の場合は、15地点に選択されているのは多度津の1値点のみである。その他の地域では、15地点の平均偏差の方が806地点の平均偏差より小さい。

 東海・北陸・近畿と九州では、15地点と806地点の値の差が大きいが、それ以外の地域では、これらの値の差が小さい。このことは、アメダスを含めた多くの観測地点で平均値を取っても、気象庁が選択した代表性の高い少数の観測地点の値で代表しても、大きな問題は生じないことを意味している。

地域差

 2013年と2012年の年平均気温の偏差が同じプラスマイナス0℃だからといっても、地域差がその変動パスに現れる。下に示すグラフは、札幌と宮古の例である。ともに2012年と2013年の年平均気温は同じ値であった。これらの観測地点の2013年と2012年の日平均気温の差を1年にわたって積算したグラフを以下に示す。

Sapporo-Miyako.jpg

 宮古の赤いグラフた札幌の青のグラフよりずっと上に位置しているが、11月下旬以降にその差はつまり、年末にはほぼ同じ値となり、年平均気温の偏差は0.0℃であった。この年間を通じた偏差の積算パスは、各地方に特徴的な形を取ることがわかっている。

 続いて、東京と飯塚の例を見てみよう。ともに2013年と2012年の年平均気温の差は+0.8 ℃の観測地点である。+0.8 ℃とプラス偏差が大きいことから、全体的に右肩上がりの傾向がみられるが、東京の方が春から夏のプラス偏差が大きめで、飯塚は春先に低下傾向の部分があり、その後一貫して上昇をしている特徴がある。しかし、年末にはほぼ同等のプラス偏差で終了している。

 続いて、2013年と2012年の年平均気温の偏差が0.8 ℃だった東京と飯塚の日平均気温の偏差の1年間の積算のグラフを示す。

Tokyo-Iiduka.jpg

 赤で示される東京のグラフが青の飯塚より9月末まで上にあるが、その後飯塚に追い越されて、年末にはほぼ同等の値となったことが示されている。このような差がついている主因は、飯塚の2013年の春の気温が2012年より低めの傾向が強かったことと、東京は7月上旬から中旬にかけて、2013年の気温が2012年の気温より高かったことによる。

 このように、地域によって季節ごとに前年との気温偏差に特徴的な動きがある。このような地域特徴は、単に前年だけとの比較のみではなく、過去5年平均気温との比較や平年値との比較、さらには過去最高年との比較を行うと一層明確になる。

 気象庁の15地点には、山陰から境(鳥取県)と浜田(島根県)が選ばれている。ところが、この2観測点の気温の変化傾向はそっくりなのである。 まず、境のグラフを見てみよう。

 緑の線が本年(2014年)と昨年(2013年)との日平均気温の差の積算である。黄色は過去5年(2009年から2013年)の日平均気温の平均値との差の積算、黒は日平均気温の平年値との差の積算、赤は過去最高年(1998年)の日平均気温との差の積算の日変化を示すグラフである。

20140528Sakai.jpg

 続いて浜田のグラフを示す。各色のグラフは境と同様のものを示しているが、その線の順番、線の形状が境のグラフとの間で極めて類似性が高いことがわかる。

20140528Hamada.jpg

 日本全国で15しかない代表地点の中に、ここまで類似した2値点が含まれていることは、見方によっては片寄りがあるといえるかもしれない。

 一方、去年の年末まで17地点であった観測点から長野と水戸が外された。17地点だったときには、同じ長野県の中から長野と飯田が選ばれており、偏っているのではという見方もあったかもしれない。そこで、長野と飯田の日平均気温の差の積算のグラフを比較してみよう。

 まず、15地点に残された飯田のグラフを見よう。

20140528Iida.jpg

 飯田の過去最高年は2004年である。

 続いて長野。長野の過去最高年は1990年である。

20140528Nagano.jpg

 過去最高年が飯田と長野都では異なることから、赤い線の形状が大きく異なることは当然である。また、縦軸のスケールが飯田と長野で異なることから、グラフの振幅は長野の方が拡大されている。とはいえ、緑、黄色、黒のグラフは、形状に類似性があるものの、値に相違がある。飯田の緑線は3月上旬までプラス偏差だが、長野はこの時期マイナス偏差である。長野は、5月上旬になってプラス偏差となったが、ここで再びマイナス偏差となっている。長野と飯田で、線の山や谷に形状が異なることも読み取れる。これらの点から、長野と飯田のグラフは同じものというには相違しているように見える。

 次に、やはり2013年末から外された水戸のグラフと、水戸と最も近い銚子と、同じ太平洋側の石巻のグラフを比較してみよう。水戸と石巻は、各色のグラフの上からの順番が異なり、全く別物ということができる。一方水戸と銚子のグラフの色の順番は同様である。ただ、水戸の過去最高年は1990年、銚子の過去最高年は1999年で互いに異なる。そのため、赤い線は相違していて当然である。

 水戸と銚子の黒、黄色、緑の線の形状は類似点もあるが、相違点もあるといったところだろう。境と浜田のように類似性が高いものではない。

20140528Mito.jpg

水戸と銚子の間では、平年値との積算比較を示す黒線の上昇傾向が類似している。

20140528Choshi.jpg

水戸と石巻のグラフは、かなり相違したものである。

20140528Ishinomaki.jpg

 ところで、2013年の年平均気温と2012年の年平均気温の偏差は、近隣の観測所の間では互いに類似した値となっている。逆に、距離が近いのに、これらの値が大きく異なる場合には、何らかの特殊事情があることが考えられる。その一例として、東京都内の観測所の2013年と2012年の年平均気温の差の値を地図上に記入したものを以下に示す。

2013-2012Tokyo.jpg

 練馬を除く各観測点の気温偏差は、0.6 ℃から0.8 ℃の間である。練馬の実0.3 ℃と明らかに異なる値となっている。

練馬の観測所は2012年12月26日に、それまでの武蔵大学・江古田キャンパス敷地内から日本銀行石神井運動場跡地に移転した。2012年の12月26日から12月31日の6日間のデーターは新観測所のデータではあるが、2012年のデーターはほぼ1年分旧観測所のデータであり、2013年のデータは新観測所のデーターとなる。練馬アメダスは移転によって、年平均気温が0.5 ℃程度低下したと考えられる。

(2014.6.1)

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