ベクトルの基本
気象学では、大気の運動を考える時などにベクトルの知識があると理解の助けになる。ベクトルとは方向と大きさの両者を持った量である。これに対して、方向がなく、大きさだけの量をスカラーと呼んでいる。英語では、それぞれヴェクター(Vector)とスケイラー(Scalar)であり、日本式の発音をすると、ベクトルはまだしもスカラーは通じない。
ベクトルは大きさと方向の両者を持った量で、方向を矢印の向きで、大きさを矢印の長さで表す。ベクトルを文字で表すときは、太文字で示すか、文字の上に矢印を付けて示す。ここでは視覚的に分かり易い、文字の上に矢印を付けて示す表示法を採用する。
3次元の直交座標空間におけるベクトルの例を下の図に示す。
大きさと方向が同じであれば、平行移動しても同じベクトルである。下の図の2本の矢印は、同じベクトル を示している。
ベクトルをスカラー倍すると、方向は変化せずに、矢印の長さが変化する。下に、ベクトル を2倍したベクトル の例を示した。
ベクトルの符号を変えると、矢印の長さは変わらずに、矢印の方向が逆転する。下に、ベクトル の符号をマイナスとしたベクトル の例を示した。
ベクトルの大きさ(矢印の長さ)を求めるには、ベクトルの始点を座標の原点まで移動させ、ベクトルの終点の座標を読み取る。ベクトルは、この座標の組 によって表される。この座標の組が意味するものは、
である。ここで、 、 、 は、それぞれ 軸、 軸、 軸方向の単位ベクトルである。
この座標の組を用いてベクトルを表した場合、ベクトル の大きさ(長さは)、ピタゴラスの定理を用いると計算できて、以下のように表される。
(2011.7.30)
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