オーム社の気象予報士試験 標準テキスト 実技編 補説03


天気図上の距離と速度の求め方

 オーム社の気象予報士試験 標準テキスト実技編のP48からP49では、「4.1.5 天気図上で擾乱の移動距離、移動速度、中心気圧を求める方法」が解説されている。良くまとめられて、簡潔に記載されているのだが、図による解説がなく、初めてだと分かり難いように思われた。その最初の部分で「実技試験では、しばしば温帯低気圧など擾乱の移動や発達を追跡する設問が出題されている。」と書かれているように、頻出問題なので、もっと詳しく説明しても良いように思われた。

 文字だけの説明だと、実際の作業の感覚がつかみにくいだろう。先行書で詳説しているから省いてしまったのだろうか?天気図上の解説がないのは不親切だろう。P97の【問題3】で、低気圧の移動速度を求める設問があるが、その解説も「低気圧の移動距離をデバイダーかコンパスで求め、移動距離を算出する。」としか解説されていない。

 設問に出される天気図の例は、気象庁のホームページで見ることができる。

Map1.jpg"

 その一例を上に引用させてもらった。10度単位で描かれている緯度と経度の関係を把握するのがまず大切である。天気図上にも、小さな数字で、緯度と経度の値は記入していあるが、上に示した天気図中には、その10度ごとの緯度と経度の値を、それぞれの線の上に赤字で拡大して書き込んだ。日本周辺の天気図では、緯度15度付近から60度近くまでが描かれており、日本周辺の経度は120度から160度となっている。

 上の図からわかるように、10度ごとの経度線で区切られている緯度線は、高緯度になるほど短くなっている。10度ごとの緯度線で区切られている経度線も、高緯度になるほど短くなっているのだが、その割合は緯度線が短くなる割合より小さい。したがって、距離の計算を行う際には、経度線を用いて行う方が良いとされている。それでも、距離の換算をした場合の誤差を小さくするには、解析対象とする現象が発生している場所に近い経度線を用いて行うべきである。

 距離の計算は、経度線上での緯度差10分を600海里、あるい1111kmはとして換算する。拡大図が示されている場合には緯度差5分を300海里あるいは555kmとして換算することがあるかもしれない。

 実況図と12時間予想図、あるいは24時間予想図との間で発生した移動距離を移動速度に換算するには、下の換算表を用いる。高気圧や低気圧の移動速度として良く現れる部分を網掛けして示した。

Speed1.jpg"

 試験では、5ノット単位あるいは5km/h単位で答えるように指定されることが多いだろう。そこで、上の表の計算結果を二捨三入した表を以下に示す。

Speed1.jpg"

 これらの表はエクセルで作成しているが、二捨三入はエクセルのMROUND関数を使う。=MROUND(計算式,5)とすればよい。

 試験の時にこの表を参照できるわけではないので、簡単に計算できるようになっておかなければならない。12時間で10度進んで50ノット。24時間で10度進んで25ノットと覚えておき、それに対する倍数計算を行う。たとえば12時間で6度分進んでいれば50×0.6=30ノット、24時間で12度進んでいれば、25×1.2=30ノットといった具合である。  キロメートル単位の場合は、同様に、12時間で10度進んで95 km/h。24時間で10度進んで45 km/hと覚えておき、それに対する倍数計算を行う。ただ、この場合には、二捨三入を2回繰り返していることによる誤差が生じる。

Speed3.jpg"

 上に示した表は、10度の時の値(95 km/hあるい45 km/h)からさかのぼって計算して作成した表であるが、濃い網掛けとなっている部分の値は、前の表と値が異なっている。デバイダーによる作業は、もともとこの程度の差異が生じるものであり、どちらの値でも正解になるものと思われる。

 ただ、数字をいろいろ覚えた上で、精度も落ちてしまうのでは元も子もない。1海里=1.85 kmと覚え、一旦ノットで計算した値を1.85倍して得られた値を二捨三入すれば、より正確な(キロメートル/時)の値となる。この方が良いかもしれない。

(2010/12/14)

 さらに読み進めたところ、P234に「(ノット表示の速度から移動距離が算出できるようにすること。速度10ノットだと6時間で緯度1度進む)。」と解説されていた。

(2010/12/27)

 計算問題の解き方の詳しい説明は、第8章にまとめて示してあった。「8.1の起床擾乱の移動速度と強度変化の見積もり」と題して、P278からP280にかけて解き方が説明されていた。

(2011/1/9)

 



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