訳者の私的画像集46


マグカップ・コレクション11 リーズ法科学システム社のマグカップ

 AFTEのセミナー会場では、鑑定関係資機材を販売する企業や鑑定関係の団体がブースを設けて、宣伝活動や情報普及活動を行っている。多くの会員は、講演が行われている間は講演会場にこもってしまうため、せっかく参加していただいている企業は、宣伝活動に使える時間をなかなか取れない。そこで、セミナーの休憩時間を長くして、これらの展示ブースをできるだけ見て回ることができるよう、プログラムには工夫が凝らされている。スタンプラリーを行い、すべての展示ブースとコンタクトを取ると、景品が当たる抽選券をゲットできる様なイベントが行われたこともあった。

 企業や団体側は宣伝活動であっても、これらは鑑定従事者にとっても大切な機会である。鑑定関係の新製品の動向に疎いと、陪審裁判では不利になることがある。専門分野の知識には、鑑定資機材の最近の動向も含まれ、それらの知識に疎いことで、鑑定結果の信頼性に対する陪審員の印象を悪くすることもあるからだ。セミナーの展示会場を巡ることは、新製品の情報を効率的に得られる貴重な機会となっている。

 企業の景品に不用意に手を出すことは、公務員倫理規定に違反するが、会社名が書かれたボールペンやバッジなどを、名刺をボックスに入れることと交換で手にすることは、許される範囲であろう。それより高価な景品は、企業側も何もなしでは渡してくれないことが多くなっている。ただ、わざわざ持ってきた景品を、そのまま持ち帰る手間を考えれると、学会の会期末が近づくと気前がよくなり、残っている景品をゲットできることもある。企業によっては、アメリカ人に優先的に渡しているところもあれば、外国人に笑顔で配るところもある。

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 この真っ黒な陶器製のマグカップは、アメリカのミネソタ州ミネアポリス州所在のリーズ法科学システム社(Leeds Forensic System Inc.)のマグカップだ。カップの周囲には、犯罪現場に張られる規制線(コードン-cordon)の黄色いテープが張り巡らされたデザインとなっている。コードンの文字が順に読めるように、左手で持った時に見える面から紹介する。

 リーズ法科学システム社が製造販売する比較顕微鏡については、すでに当サイトの中で紹介している(リーズ銃器工具痕鑑定比較顕微鏡)。その中で紹介したように、同社は発射痕工具痕用の比較顕微鏡を開発し、2001年7月8日から13日にかけて、カリフォルニア州ニューポート・ビーチで開催されたAFTEの第32回セミナーで展示した。このマグカップは、その時のものではないかと思われる。アメリカの発射痕用比較顕微鏡は、カルヴィン・ゴダードにさかのぼる歴史のあるものだが、20世紀中にドイツやスイスの製品によって淘汰されてしまった。そこに、アメリカ製の比較顕微鏡を復活させようと企図したのがリーズ社である。

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 実際のところでは、リーズ社の比較顕微鏡は、その光学系にオリンパスの顕微鏡を用いている。ただ、それを構成して比較顕微鏡に仕上げたのはリーズ社である。

 コードンの下に描かれている絵が何か、分かり難いかもしれない。弾丸が命中した痕跡、いわゆる弾痕と、その下に散らばった打ち殻薬きょうが描かれている。それぞれ7個描かれている。

 その下には、会社名、ウエッブサイトのアドレスと電話が、白い文字で書かれている。

 

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 ここまでマグカップを回すと、コードンに記載された文字が「CRIME SCENE AREA DO NOT ENTER」であることが分かる。

 ちなみに、TVショーのCSI:のDVDは、米国内ではコードンが巻かれて販売されている。そのコードンに書かれている文字は「CRIME SCENE : DO NOT CROSS」である。  

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 カップの底も、糸底の部分を除くと黒く着色されており、中央に小さな円が書かれ、その外周にLINYIと中国あるいは陶器の表示がある。したがって、中国山東省の臨沂(りんぎ)市で製造されたものとなる。また、円の内側には、登録商標の「Silver phenix」と不死鳥の絵が描かれている。

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 このマグカップは黒い色で、中に注いだコーヒーの色が分かり難いが、コップの汚れが目立たないため、退職までの間、職場でコーヒーを飲むのに3年ほど使用した。そのため、コードンの色はすっかりあせてしまった。それより前に愛用していたマグカップを割ってしまったから、これに交換したことは覚えているのだが、その前に使っていたマグカップが何であったかをすっかり忘れてしまった。

 思えば、2007年までの間、同じ湯呑とマグカップを職場では愛用していた。湯呑は、家内の実家の近所のすし屋のものだった。30年近く使っていたのを2007年に割ってしまった。その後、自宅の近くのすし屋の湯呑に変えたら、それもしばらくして割ってしまった。それに続いて、マグカップも割ってしまったのだ。その割ったマグカップが何であったか思い出せない。

 迷信は信じたくないが、立て続けにコップを割った後、しばらくしたら体調を崩してしまった。やはり、食器を割ったりすることは、何かのサインになっているのかもしれない。

 
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