シカゴ市警察のバインダー
シカゴ市は何度か訪れたことがあるが、シカゴ市警察は1度しか訪ねたことがない。それは、平成2年の秋のことであった。知り合いは何人かいても、上司を連れての公式訪問となると緊張した。昼過ぎにスプリングフィールドからオヘアに到着し、ホテルに荷物を預け、午後2時過ぎに電話を入れた。それまで、この程度の時刻で警察を訪問することはあった。あまり早く行くと、長い間お邪魔することになることから、少し遅めにうかがうことも多かった。ところが、電話に出た当時の銃器・工具痕鑑定部門のボスであったドナルド・スミスは、独特のしわがれ声で、明日にしてくれというそっけない答えが返ってきたことからあわてた。聞くところによると、シカゴ警察の鑑定部門の勤務時間は朝7時から午後3時までだという。早いのは構わないが、遅く来るのは困るとのことだった。
シカゴ市警察の銃器区具痕鑑定部門の人たちは、忙しい中を朝早くから昼過ぎまで、我々のために時間を割いてくれた。その時の記念品が、この青いバインダーである。表に、大きくシカゴ市警察と表示されており、その下にシカゴ市警察のマークが描かれている。
それを、数人で1日の内に処理しなければ、鑑定は積み残されてしまう。それらの拳銃の大半は昨晩の押収分だという。その前日、シカゴ市で1泊したのだが、その間に警察官がそれだけの仕事をしていたということだ。当時、年間2万5000丁から3万丁の押収拳銃を処理していたということで、確かに1日でそれだけの量となる。
比較顕微鏡はAOのものだった。さっそくこれを調べてみたまえといわれ、合う部分を探すと、「シカゴ市と日本で同じ結論になった」とお世辞をいってくれた。その時お世話になった方々の大半の人は、すでにこの世にはいない。鑑定者は、毎日朝7時から午後3時まで同様の作業をくりかえしていたようだった。24時間の交代勤務の体制との話もあった。 |
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