訳者の私的画像集78


ハイポイント自動装てん式拳銃のカット銃身

 アメリカの銃器関連企業の中にはAFTEの活動にきわめて協力的な会社がある。ウインチェスターやレミントンもそうであったが、最近のハイポイントの協力ぶりは群を抜いている。ハイポイント銃器(HI POINT FIREARMS)は、低価格の自動装填式拳銃とカービン銃の製造販売をしている。当初は安かろう悪かろうの典型のメーカーのようにみられていたのだが、我々鑑定者に対する協力の程度が群を抜いてよかったため、そのような見方はすぐに変化した。

 オーナーのトーマス・デーブ(Thomas Deeb)氏(トム)は、ちょっと見にはこわもての近寄りがたい雰囲気を醸し出しているのだが、実は人なつこく親切な男である。訳者に対しても、一目を置いているような付き合い方をしていただいている。AFTEの会員に対して、工場を惜しみなく見学させ、いろいろな質問にも懇切丁寧に答えてくれる。

HiPoint_CutBarrel1.jpg

 このカット銃身は、そのトムが200本もの9mm銃身をカットして、400名の会員に配布したものである。銃身長は110mm、銃身外径15.2mm、銃腔径9.0mmである。

HiPoint_CutBarrel2.jpg

 薬室長約14mmで、薬室の長さが短いことから、銃身後端はカットされている可能性がある。腔旋の開始部(起旋部)にはフォーシング・コーンが加工されているように見える。

HiPoint_CutBarrel3.jpg

 腔旋は右回転6条である。ハイポイント特有の左回転9条や左回転7条のものではない。旋丘幅は1.74mm程度であろうか。腔旋ピッチは1回転長12インチ程度と思われる。そうすると、腔旋角は5.3度となる。

HiPoint_CutBarrel4.jpg

 ハイポイントは腔旋をボタンの1回通しで加工している。上の写真では分かりにくいが、薬室側の銃腔部の写真からは、旋丘部分に円周方向の工具痕が見られる。一方、腔旋の方向に沿った工具痕はあまり目立たない。銃口部にはクラウンが付けられている。

 旋丘のエッジ部の仕上げは、それほど繊細なものではないように見える。引退後は、表面の工具痕を味わうことのできる機材を持っていないので、これ以上のコメントはできない。

(2011.9.3)

 
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