訳者の私的画像集76


FT社のカルヴィン・ゴダード記念本

 フォレンシック・テクノロジー社(以下、FT社)がAFTEのセミナーに初参加したのは1991年のヒューストン大会であった。ヒューストン大会は、父とともに参加したことから訳者にとっても記念すべき大会となっている。2011年のシカゴ大会は、FT社にとってヒューストン大会から丸20年経過した記念すべき大会であった。その間、FT社は、銃器工具痕鑑定界で顕著な業績を挙げた者に贈るカルヴィン・ゴダード賞を創設した。

 この20年の間に、FT社はIBISの性能向上と世界への普及という目覚ましい成果を上げてきた。FT社は2011年のAFTEシカゴ大会で、カルヴィン・ゴダードの業績を紹介する本を作成することによって、銃器鑑識界における足跡を形に残して刻むことにしたようだ。

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 表紙は、全体的に黒く塗られたイメージで、書名は「Calvin Goddard: A Perspective into the History of Ballistics Identification」である。

 表紙には、カルヴィン・ゴダードを撮影した有名な写真をトリミングしたものが3枚はめ込まれている。部分的な写真なのだが、元の写真がなんであるかは、この世界に身を置いてきた者には分かるという仕掛けのようにも思えた。

 表紙の右下隅には、FTロゴマークがある。

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 裏表紙は真っ黒であり、右下隅にFT社のロゴマークと版権表示がある。

 この黒い本は、ゴダードのヨーロッパ旅行中のメモ帳あるいは日記帳の外観を踏襲したものであるようだ。最初に、この20年間のFT社の発展と銃器鑑識界への貢献を記念してこの本をささげるといった内容の、FT社のロバート・ウォルシュ社長のメッセージがある。それに続いて、ゴダードがヨーロッパの銃器鑑識を調査するために、1929年の8月から10月にかけてヨーロッパを旅行した際の旅行日記のコピーへと続いている。

 達筆の筆記体の英語であり、読むのには時間を要する。ただ、挿入されている鑑定機材のスケッチは、何を描いているのかよく分かる。

 ゴダードは、このヨーロッパ旅行で、オーストリアのウィーン、ハンガリーのブダペスト、ルーマニアのブカレスト、フランス、ドイツ、デンマーク、イギリス・ロンドンのスコットランドヤードを訪問したらしい。

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 ゴダードが比較顕微鏡の前にいる有名な写真も含まれていた。

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 本書の後半は、シカゴ警察雑誌に掲載されたゴダードの「銃器鑑識の歴史」のリプリントとなっている。その内容は、カルヴィン・H・ゴダードが語る発射痕鑑定の歴史と重なる部分が多い。その中で、ゴダードらがニューヨークに開設した法弾道学局の内部を撮影した貴重な写真があり、ここに転載させてもらった。

(2011.9.2)

 
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