訳者の私的画像集74


AFTEの発射痕鑑定デモ用弾丸セット

 AFTEでは、裁判の発射痕鑑定の原理を説明する上で役立つデモ用の弾丸模型と薬きょう模型を、会員に配布している。今回は、そのうちの弾丸の模型を紹介する。

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 今となって記憶がはっきりしないのだが、2005年ころのAFTEのセミナーで配布されたものだと思う。その翌年のセミナーで薬きょうの模型も配布されたと記憶している。

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 丹銅あるいは黄銅被甲の弾丸をイメージした色調のプラスチック製である。真上から見ると、パーティングラインがしっかりと確認できる。弾丸の全長は78mm、弾丸径は63mmである。弾丸の円筒部(ベアリングサーフェイス)には、6条の腔旋痕が付けられている。

 腔旋痕の深さは2.5mmある。腔旋痕の深さは強調されている。小火器用の弾丸径は5.5mmから12.5mm程度であり、そのすべてで腔旋の深さは0.1mm程度である。ただ、被甲弾丸の腔旋痕の深さはこれより浅く0.06~0.08mm程度であろうか?弾丸模型が約10倍のスケールであるとすれば、腔旋痕の深さは0.6~0.8mm、深くても1.0mm程度であり、腔旋痕の深さは2.5倍に強調されていると考えられる。

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 腔旋痕を弾軸に対して傾けるところまでの細工は難しかったと思われ、回転角度のないストレートの腔旋痕となっている。説明の際は、腔旋痕は右または左に傾いており、その回転方向は銃器メーカーによって異なる、といった説明をする必要がある。

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 6条の腔旋痕の線条痕パターンは互いに異なるものである。

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 各腔旋痕の線条痕には、それぞれ特徴的なパターンが見られる。

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 発射痕鑑定では、これらの線条痕を合わせることができるか否かを調べることを説明するための模型である。腔旋痕が6条あるので、6回の比較を行えば、その結論は出せる。弾丸模型は1種類しかないので、この腔旋痕は必ず合わせることができる。

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 ただ、パーティングラインを目印にすると、1/2の確率で合わせることができる。上の写真では、中央の腔旋痕の上側にある旋底痕の中央にパーティングラインが見える。

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 上の写真は、腔旋痕の位相を合わせられていない状況を示している。一番右側の弾丸は、その前の写真と同じ位相で、旋丘痕の上側の旋底痕にパーティングラインが見える。左側の弾丸と中央の弾丸は、それとは異なる位相となっており、線条痕が合わせられていない。

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 弾丸の内側は中空となっている。旋底痕部分の厚みは4.3mmあり、旋丘痕部分で一番薄い部分は0.8mm程度である。樹脂の種類はABSであろうか?

 この弾丸模型は、その後AFTEセミナーの初回出席者First time attendeeへの配布物となり、現在でも配布が続けられている。 (2011.9.1) 

 
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